1. はじめに
フレームDIYラボではアルミフレームやアルミパイプを使ったDIYを紹介していますが、
興味がある人と一緒に「LINK YOUR DESIGN」という共同DIYも行なっています。
これは実際にアルミフレームやパイプを使ったDIYを一緒に協力しながら行う活動です。
アルミフレームやアルミパイプはとても便利な材料で木材にはない優れた特性がありますが、
普段身近にないため使い方がわからないという欠点があります。
そこでアルミフレームやアルミパイプの使い方や選定、設計などをアドバイスしながら
初めての人でも安心してDIYできるようにするものです。
これまで行なってきた共同DIYの様子はこちらから見る事ができます。
アルミパイプやアルミフレームを使ってみたいという方と一緒に共同DIYを行っています。これらの材料はとても便利ですが入手性の悪さからあまり知られていません。そのため部品選定や使い方、加工、組立方法など初めての人はわかりにくいです。そこで共同DIYでは誰もが扱えるようにサポートしています。
今回の相談は名古屋市のAさんでマンションにテラス屋根を作りたいというものです。
最初に話を聞いた時には驚きましたが、Aさんの部屋は2Fで庭があるお宅でした。
その庭に物置きが置かれており広いスペースがあります。
ここにテラス屋根を作りたいという内容です。
これは以前、私が賃貸住宅にテラス屋根をDIYした記事を参考にされて
御相談戴きました。
住んでいる賃貸住宅には軒や屋根がなく、洗濯物を干したり自転車を雨から避ける場所がありません。そこでアルミパイプを使って幅4mもあるテラス屋根を作りました。特徴は壁を傷付けたりコンクリートを使用せずにいつでも元に戻せること、目隠し壁まで取り付けても費用は4万円台という点です。
詳しい話を聞くと約4×4.5mとかなり幅が広い庭で屋根もとても大きな屋根になりそうです。
果たしてマンションでこのような大きいテラス屋根が作れるのでしょうか?
2. Aさんから相談内容
こちらがAさんからいただいた相談内容です。
(相談内容)
木材のDIYは趣味程度でアルミフレームやパイプをこれまで全く使ったことがない為
設計からサポート・図面や部品リスト、組立図・
(窓側左柱1,350mm 窓側右柱2,650mm)×ベランダ横幅約4,500mm
×庭奥行約3,000~約4,
これまでは普段、ターフを掛けられており雨天時や強風時に外されていたようです。
右側には隣部屋との境の白いフェンスがあり、そこに柱を立てたいとのことです。
窓の左側には物置小屋があり、それを覆うようにテラス屋根を付けます。
窓の向かい側にはブロック塀があってその上にフェンスがあります。
フェンスの向こう側は空き地のようで歩行者や車が通る場所ではありません。
最後に住宅窓側ですが、窓が4枚並んだ広いリビングでこれを全てテラスで覆います。
一枚の写真では全体が映せないほどの広いスペースです。
上から全体を見るとこのような場所です。
この部屋は2Fですがマンションが坂の上にあり傾斜があるため1Fに部屋はないようです。
自宅側の床はコンクリートで上には3Fの部屋のベランダがあります。
この3Fベランダの下からブロックフェンスに向かって屋根を出します。
自宅のベランダは2部屋分で約4.5mあり、ベランダからブロックフェンスまでは約4mです。
これは自分で作ろうと思ってもなかなか難しそうな案件です。
しかもそれを初めて使うアルミパイプという材料でチャレンジしたいということです。
まずは写真を元にテラス屋根の構想や設計を考えてみます。
3.ツ マンション テラス屋根の構想
まずはどのような物を作るのかお互いのイメージを合わせることが重要です。
せっかくCADで設計しても構想が違うと初めからやり直しとなります。
テラス屋根の場合、柱の位置や固定方法が最も重要となります。
特に柱の固定が重要でこれが不十分だと強風で屋根が動いてしまいます。
このテラス屋根の柱はAさんの希望により住宅側と向かいのフェンス側に立てる予定で
その間や横には入れません。
つまり4mの長さの屋根をその途中で受けることなく固定します。
正直なところ、これはスパンが長く私的には不安がありました。
向かい側のブロック塀フェンス柱はしっかりコンクリートで基礎固定されていました。
そのためこの柱に抱き合わせる形でテラス屋根の柱も固定します。
この方法は私が以前DIYした賃貸住宅でのテラス屋根と同じ方法です。
当時も4m程の幅がありましたが、台風でも充分耐え得ることができました。
問題は住宅側の柱をどのように立てるかです。
こちらは別の柱などなく、床はコンクリートなので基礎を作ることができません。
最も確実な方法としてはコンクリートに深い穴を開けてそこに柱を立てて、
再びコンクリートで埋め戻す方法です。
しかしこの方法は特殊な道具が必要で内容も素人が簡単に手出しできるものではありません。
ここをどうクリアするのかがポイントになります。
そこで今回はアルミパイプを使って天井と床の間で突っ張って固定する方法を考えました。
そして柱どうしを梁パイプで連結して一体化することで外れにくくします。
これはこれまでカーテンを作る際によく利用していた方法です。
今の賃貸部屋は間取りがとても悪く、リビングに入る扉を開けるとキッチンが全部見えてしまいます。キレイな時は問題ありませんが、そうでないと大変。そこでキッチンを丸ごと囲う目隠しカーテンをアルミパイプで作りました。パイプを突っ張り棒のように使えば、どんな場所にでもカーテンや壁、扉を作ることができますよ。
突っ張りと聞くと弱そうなイメージがあるかと思いますが、
この方法は室内の床と天井の間で行うと天井を突き破るほどの力がでます。
さらに今回は屋外で使うため保持力が必要でパイプ径を太くすることにしました。
またもしこの方法で固定が弱い場合は後からコンクリートアンカーを使って
足を直接固定する事も出来ます。
次に屋根を支える梁パイプです。
テラス屋根の幅は約4.5mと非常に長く、さらに支える柱は両端しか設置しません。
そこでたわみにくいWパイプを使うことにしました。
これはパイプが2本くっ付いた形状をしており、パイプの強度に異方性かあります。
以前、目隠しフェンスをDIYした時に採用したパイプです。
このパイプの特徴は2本のパイプを立てる向きに取り付けると強度が10倍になることです。
そのためたわみにくくなり、長いスパンの梁でも使用することができます。
こちらの記事に強度の違いを詳しく説明しています。
野地板とアルミパイプを使って高さ1.8m、幅8mの目隠しフェンスをDIYしました。独立基礎を作ってそこにアルミパイプを建てて塗装した野地板を貼り付けます。板の貼り方を工夫したことで目線が隠れて風が抜けるフェンスとなっています。しかも製作費用はナント5万円以下!?
屋根を受ける垂木パイプはあまり重たくならないように普通のパイプとしました。
このパイプはポリカ波板のくぼみとちょうど合うため固定しやすいです。
これでマンションテラス屋根の構想は完成です。
この内容を元にAさんと一緒にスケッチを作成してお互いのイメージを合わせていきます。
二人で考えた構想はこのような感じになりました。
次にこの構想図からCADを使って具体的に設計していきます。
4. マンションテラス屋根の設計
アルミパイプの設計では専用の3D CADソフトを使うことができます。
これは製作物が大きくなっても使う事ができるため、このテラス屋根も設計できます。
このCADを使えば事前にあらゆる角度からチェックできて、
部品リストも作成できるのでとても便利です。
アルミフレームやアルミパイプには専用の3D CADが無料で提供されています。そのためこれを使えば作る前に色んな角度から見ることが可能となり、設計ミスが少なくなります。さらに部品の長さや種類、数なども自動で計算してくれるので部品手配ミスや加工ミスも低減することができます。
こちらが完成した設計図となります。
隙間が空いている部分は本来連結しているのですが、CADソフトの制約で書けませんでした。
わかりにくい図面ですが、窓側からブロック塀側を見た様子となります。
窓側の右側は床から天井まで柱を設置するため長いのですが、
左側は隣部屋との境フェンスの上に立てるため短くなっています。
正面のブロック塀側も上のフェンスと抱合せるため柱の長さは短くなっています。
このように見るととても不思議な形状をしています。
細かな寸法はAさんに測ってもらい確認しています。
住宅側の柱はAさんの希望からまずは2本で考えましたが、
実際には完成後に補強することになり柱を2本追加しました。
このように初めて作るものなので構想通りにいかない事もありますが、
後から簡単に追加変更できる事もアルミパイプの良い点です。
またこのDIYは非常に大きいため部品を一括購入せずに、製作段階に分けて手配しました。
この方法だと製作に時間がかかるのですが、確認しながら作業できるので安心です。
また分割で購入しても費用は変わらないので、初めての方にはこの方法を勧めています。
屋根の傾斜は角度を調整できるコネクタを使わずに柱の高さを変える事で傾斜をつけました。
これは私の方で実際に同じ傾斜を作ってコネクタ取付や雨水の流れなどを確認しています。
実際に作らないとわからない事を私の方で確認する事で失敗を少なくすることができます。
このような二人のやり取りについてはこちらで見ることができます。
5. マンションテラス屋根の製作
今回の共同DIYが作る物が大きくて現地に合わせる合わせる必要があったので
3回に分けて製作、納品しました。
一部、実寸と寸法が異なり切断される場面もありました。
このように現地に合わせて作るDIYでは図面通りにいかないこともあります。
しかし身近な道具で簡単に切断できる点がアルミパイプの良い所です。
アルミパイプの切断作業は動画でも見れますので参考にされて下さい。
まずは窓側の柱2本を組み立て、間に梁となるWパイプを取り付けます。
柱パイプは床と天井の間で突っ張って固定してます。
滑り止めのためゴムシートを挟んで設置しました。
隣家との仕切りブロックの上にも同様にして柱を固定しています。
このように住宅窓側の柱はそれぞれで長さが異なりますが、パイプだと簡単に対応できます。
次にフェンス側の柱パイプですが、フェンス柱に金具で抱き合わせて固定します。
そして柱パイプの上に梁パイプを固定します。
柱や梁パイプの固定では外れないように補強コネクタを全て追加しました。
そして窓側の梁パイプとフェンス側の梁パイプを連結して屋根の枠組みが完成です。
窓側梁パイプとフェンス側梁パイプは高低差があり、
窓側からフェンス側に向かって傾斜が付いています。
これにより雨水がフェンス側に流れるようになっています。
次はポリカ波板を載せる垂木パイプを窓側梁パイプとフェンス側梁の間に取り付けます。
この地域は積雪がほとんどないため、垂木パイプは直径28mmの軽いパイプとしています。
垂木パイプの取付間隔は波板のくぼみに合わせながら調整し、
波板の上からスクリューネジでパイプに打ち込みます。
この方法は簡単ですが、昨年の大型台風でも外れる事がありませんでした。
波板とアルミパイプの取付作業はフレームキャンバスというアルミフレーム紹介動画の中に
ありますので興味があればご覧ください。
アルミフレームやアルミパイプの基礎から応用まで動画を見ながら学びませんか?ここではアルミフレームの特徴や加工方法、3D CADの使い方、各種部品を使った応用まで幅広く動画で説明しています。アルミDIYの基礎から学んだり、自分の興味ある部品だけ確認のために見ることもできます。初めて扱う方でも安心して利用できることを心がけて動画を作成しています。
このテラス屋根の幅は約4.5mmもあるので10枚程の波板を使われたそうです。
アルミパイプはちょうど波板のくぼみに入るサイズでパイプの取付位置を調整しながら
作業ができるため大変やりやすいです。
波板を全て貼り終えたらテラス屋根の完成です。
6. マンションテラス屋根の完成
完成したマンションテラス屋根はこちらになります。
初めて見たときはこんな大きな屋根がマンションの一室にある事に驚きました。
まずは窓側ですが、完全に屋根に覆われているので雨が降っても濡れることがありません。
また波板を白色にすることで採光も取れて明るい庭になっています。
これだけ広い屋根があると雨が降っていても庭にそのまま出ることもできます。
屋根は左右にある物置小屋も覆っているので天候を気にせず出し入れが出来そうです。
フェンス側は手前にある側溝まで伸びているので屋根から流れた雨はそのまま側溝に落ちて、
庭を濡らすことがなさそうです。
さらには上の階からの視線が一切気にならず、洗濯物を干したりくつろいだりできる
スペースとなっています。
後日、窓側梁パイプに柱を追加されましたが、その際に洗濯干し竿も取り付けたので
この屋根の下で天候気にせず干せるようになりました。
Aさんはこの屋根の下でちょっとしたBBQをしたいとおっしゃっていましたが、
これだけ囲まれているとできそうですね。
これだけ大きいテラス屋根ですが、使用する工具は金物ノコギリ、六角レンチ、スパナなど
どれも100均で購入できるような工具だけです。
Aさんは普段からDIYされるようですが、アルミパイプを使うのは初めてです。
身近な工具で経験や特殊な技術なしで簡単に使えるアルミパイプは家庭DIYに最適な
材料だと改めて思いました。
7. さいごに
マンションテラス屋根の共同DIYは如何だったでしょうか?
完成して思いましたが、このようなテラス屋根を業者やメーカに依頼しても
既製品にはなく、多分難しいと思います。
やはり自分で思ったように作れるというDIYだからこそできた屋根だと感じました。
アルミパイプのDIYは作るよりも構造や固定方法などを考える方が時間がかかります。
もしそれが自分の自宅のような身近な場所だとすぐに確認できますが、
このように遠方の方と一緒にDIYするときは戴く情報が全てなので慎重に対応します。
それでもメールやブログだけでお互いに繋がってこれだけの物を一緒に作っていける、
これもアルミパイプの取扱いの簡単さによるお陰だと思います。
ただ大型台風などの際に耐えうるか、まだ確認できていません。
もし強風等で揺れたりガタガタするようなことがあれば今後補強していくこともあります。
その際にもAさんと一緒に考えて、安心安全に利用できるテラス屋根にしていきたいです。
この記事が皆さんの参考になれば幸いです。
アルミフレームやパイプを使ったDIYを一緒にしてみませんか?
DIYする時間や工具がない
普段DIYをしないので自信がない
そんな方にも安心で手間がかからず欲しい物が手に入る共同DIYです。
一人で考えるよりも複数人で考えた方がよりいいアイデアも生まれます。
まず設計や構想は御自分で考えて欲しいものをイメージしてください。
もし自分で加工から組み立てまでされる方は必要に応じてアドバイスを致しますし、
手間な部品手配や加工をしたくない方はこちらで実施して組み立てる状態の部品を
お送りすることもできます。
初めて使う材料で不安な方も安心してチャレンジすることができますよ。
気に入った物が見つからない場合は試してみては如何でしょうか?
サポートやアドバイスは無料で実施しているためできる事、できない事があります。
詳しいサポート内容や進め方はこちらで説明しています。
またこれまでのサポート事例はこちら。
「サポート事例集」
これまでの共同DIYの事例です。
木材で作れなかった様々な物が自分で作れるようになりますよ。
トヨタ製コースターの車中に2段ベッドを共同DIYしました。大人が寝るベッドなのでベッド自体の強度と車中での固定強度が必要となります。更に通路を遮るようにベッドを設置するため、通行できるような仕組みも必要です。そこでアルミフレームを使って強度があって通行可能なベッドを作っています。
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社団法人イノプレックス様と共同で室内栽培用ラックを製作しました。安全面に考慮していくつかの構造モデルを考えて強度計算を実施。見合ったコストでしっかりしたラックを製作することができました。アルミフレームは木材と違って製作する前に強度を計算できるため失敗が少なく大変便利です。
アルミフレームを使ってキャンターの荷台にトノカバーを共同DIYしました。カバー材にはアルミ縞板を使い、その枠組みをアルミフレームで作ります。カバーは左右に羽のように開き、ダンパーを使って開けた状態で保持できるようにしました。こんなカッコいいカバーをDIYで作れるから驚きです。
カーポートと既設屋根の間に隙間があり、雨で濡れてしまいます。そこでアルミパイプを使って屋根を新たに追加することになりました。しかしカーポートと既設屋根は高さが異なるため斜めになってしまいます。このような場所でもアルミパイプであれば簡単に作ることができます。
アルミパイプを使って天井から吊るすホームシアター用のスクリーンを共同DIYしました。元々イレクターパイプを使われていましたが、スクリーンの重さに耐えきれず落ちてしまいます。そこで強度が高いアルミパイプで置き換えることでたわみを大きく改善したロールスクリーンが完成しました。
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仙台市在住のKさんから「LINK YOUR DESIGN」よりお問い合わせいただいた軽トラのトノカバーをアルミフレームを使って共同DIYしました。Kさんにカバーの取付方法や寸法の確認をお願いし、私が設計、部品選定を行うことで希望されるトノカバーが完成!一人で作るよりも良いものができますよ。