(共同DIY) 幼稚園に取り外し可能な演劇用舞台幕を製作


1. はじめに

フレームDIYラボではアルミフレームやアルミパイプを使ったDIYを紹介していますが、

興味がある人と一緒に「LINK YOUR DESIGN」という共同DIYも行なっています。

これは実際にアルミフレームやパイプを使ったDIYを一緒に協力しながら行う活動です。

アルミフレームやアルミパイプはとても便利な材料で木材にはない優れた特性がありますが、

普段身近にないため使い方がわからないという欠点があります。

そこでアルミフレームやアルミパイプの使い方や選定、設計などをアドバイスしながら

初めての人でも安心してDIYできるようにするものです。

これまで行なってきた共同DIYの様子はこちらから見る事ができます。


(共同DIYサポート事例集)

アルミパイプやアルミフレームを使ってみたいという方と一緒に共同DIYを行っています。これらの材料はとても便利ですが入手性の悪さからあまり知られていません。そのため部品選定や使い方、加工、組立方法など初めての人はわかりにくいです。そこで共同DIYでは誰もが扱えるようにサポートしています。


今回の相談は神奈川県にある幼稚園から演劇用の舞台幕を作りたいというものです。

幼稚園の吹き抜けのホールに壁を傷つける事なく4mの長さの開閉できる演劇用の

舞台幕を取り付けたいという内容です。

こちらが幼稚園のホールの様子ですが、正面の壁を背にした舞台を作って

その前に開閉式の幅4mある舞台幕を取付けたいという相談でした。

舞台幕の幅が4mもあるとそれなりに重量があり、突っ張り棒などは使えません。

しかし壁や天井に直接釘やビスで打ちつけて木材や柱を固定することもできません。

演劇が終わったら元通りに戻すため組立ての簡単さや収納しやすさも重要です。

そんな時に当ブログの突っ張りパイプの記事を読んでいただき、御連絡を戴きました。

確かにこれだけ聞くとDIYで作るのは難しそうですね・・・

しかし実はアルミパイプを利用すればこのようなDIYも簡単に実現できます。

それではどんな舞台幕が完成したのかご覧下さい。




2. 幼稚園演劇用舞台幕の相談

まずはいつものように相談者の方がどのような物が欲しいのか詳しくお聞きします。

相談者の神奈川県の幼稚園にお勤めのSさんです。

(相談メール 抜粋引用)


保育園のホールの吹き抜け部分に4mの開閉のできるカーテン式の幕を取り付けたいと考えています。

突っ張り棒の組み合わせですとカーテンの開け閉めに荷重が掛り不安です。

サイトを拝見して何か手立てがありそうだと感じましたのでご相談させて頂きました。


その後、メールで何度かやり取りを繰り返し、具体的な内容が判ってきました。

(幼稚園演劇用舞台幕への要求事項)

・幼稚園の壁や天井、床を傷付けず使用後は元に戻せること

・ホール吹き抜け部分に重さ約5kg、長さ4m、高さ約2.5mの開閉式幕を取り付ける

・使用時に外れたり、倒れたりしないこと

・使用しない時に収納しやすいように2m程度の長さにする

今回の相談では図面やスケッチなどはなく、現場写真を見せてもらいました。

このように写真でここにこんな物を作りたいという相談でも全然構いません。

こんな時は私の方でスケッチを作ってお互いのイメージをすり合わせていきます。

この幕は幼稚園の演劇会の時に舞台幕として使われるのでしょうね。

ここで演劇を頑張る子供達のためにも安全でしっかりした舞台幕を作ってあげたいです。

このDIYのポイントは①舞台幕の幅が4mと長いこと、②柱の固定方法です。

吹き抜け部分の横にある1F天井部分に新たに柱を取り付けますが、

天井自体にあまり強度がないようです。

間違って倒れでもしたら子供達に危険が及んでしまうのでここは十分に注意します。


3. 幼稚園演劇用舞台幕の設計

3.1 設計のポイント

この幼稚園演劇用舞台幕の設計ポイントは、以下の通りです。

① 柱が倒れない設置方法

園児が近くを通るため絶対に架台が倒れてはいけません。

しかし4mもある舞台幕を使えば柱間の距離が遠くてそのままではなかなか安定しません。

舞台幕自体も重たいため開閉の際にバランスが崩れて倒れやすくなります。

柱を床に直接ビスで固定できない点がやはりネックになります。

② たわまず外れない舞台幕の設置方法

4mという距離はかなり長いため材料自体の強度及び柱との接合強度が重要になります。

弱い材料を使ってしまうと中間あたりを手で引っ張ると簡単にたわんでしまいます。

更に柱は左右の2本だけでその間にはありません。

そのため最大で2mのモーメント距離が発生し、柱と梁の固定が外れやすくなります。

改めて考えるとやはり難しいですね。

それなりの物でよければ簡単に作れますが、上記要件を満たそうとすると悩みます。

長いスパンの物は強度を維持することが難しく、材料選定がとても重要となります。

3.2 舞台幕の柱の設計

今回のDIYで使用する材料にアルミパイプを選びました。

アルミパイプは金属のアルミでできたパイプで様々な太さや強度が選べるのが特徴です。

しかしホームセンターなどでは取扱いがないため普段目にすることはありませんが、

企業や工場などでは一般的によく使われる材料です。


(アルミパイプの特徴)

 家庭DIYで利用する金属パイプにイレクターパイプがあります。アルミパイプも同様な用途で利用できますが、イレクターパイプよりも優れた特徴がいくつもあります。ここではイレクターパイプとの比較やアルミパイプの種類について、詳しく紹介しています。


アルミパイプは様々なコネクタを使うことでパイプどうしを自由に連結できるので便利です。

コネクタ連結強度が明確なので使用用途に応じて強度の過不足を検討できます。

さらに3D CADを使って設計することができるので寸法の間違いなどを作る前に

見つけることができます。

共同DIYではこの3D CADを使って相談者と図面を見ながら話を進めています。


フレーム、パイプの3D CAD設計)

 アルミフレームやアルミパイプには専用の3D CADが無料で提供されています。そのためこれを使えば作る前に色んな角度から見ることが可能となり、設計ミスが少なくなります。さらに部品の長さや種類、数なども自動で計算してくれるので部品手配ミスや加工ミスも低減することができます。


まず柱の設置ですが、壁や天井に傷付けずに元に戻せる突っ張りパイプ方式を採用しました。

これはアルミパイプを天井と床の間に立ててアジャスターを使って縦に突っ張る方法です。

この方法は普通の突っ張り棒とは比べ物にならないほど強い突っ張り強度が得られます。

薄い天井板であれば簡単に持ち上げるくらいの力です。

さらに突っ張ったパイプには他のパイプを簡単に連結できるメリットがあります。

これが一般の突っ張り棒にない最大の特徴です。

以前、この方法を使ってキッチンをぐるっと囲むカーテンをDIYしたことがあります。


(賃貸でキッチン目隠しカーテンをDIY

 今の賃貸部屋は間取りがとても悪く、リビングに入る扉を開けるとキッチンが全部見えてしまいます。キレイな時は問題ありませんが、そうでないと大変。そこでキッチンを丸ごと囲う目隠しカーテンをアルミパイプで作りました。パイプを突っ張り棒のように使えば、どんな場所にでもカーテンや壁、扉を作ることができますよ。


天井と床が強ければこれだけで十分固定できますが、

こちらは天井材が弱いため強力に突っ張ることができません。

そこで柱の下に転倒防止の足を取り付けて、さらに天井に向かってパイプで突っ張って

固定する方法を採用しました。

これだと柱に触れても倒れる事はなく、柱自体も上下で突っ張って固定するため安定します。

足と柱パイプの間には補強用のコネクタを追加して一体化する事で崩れないようにしました。

またパイプ端はエッジがあり、足に当たると少し痛いため樹脂キャップをはめて保護します。

特に園児がいる場所なのでちょっとしたことにも安全対策は必要です。

柱の長さが約2.5mと長いため、そこに使用するアルミパイプは直径43mmの

少し大きめのパイプを使って剛性を高めました。

3.3 舞台幕の梁の設計

次に2本の柱の間に入る4mの舞台幕を掛けるための梁を考えます。

まず収納を考えると4mは長すぎるため2mを2本ジョイントすることにしました。

アルミパイプには短いパイプをつないで延長するためのコネクタもあります。

舞台幕の重量をお聞きしたところ約5kgということだったので

5kgを均等荷重で加えたときにたわみ量が少ないWパイプを採用しました。

通常のパイプだと10mmほどたわみますが、このWパイプを使えば1mmしかたわみません。

そしてこのWパイプと柱を連結するコネクタとは別に補強コネクタを追加して、

柱からWパイプが外れることを防ぎます。

このように使用用途や想定荷重が事前にわかっていれば、

それに応じたパイプやコネクタの選定、補強が行えるため設計の信頼性が高くなります。

「実際にできたものが全く使えない・・・」といったことを回避することができます。

これで一通り設計は終了です。

両側に柱を立てて天井と床の間で突っ張り、その間にWパイプの梁を固定しています。

この梁パイプの高さは自由に調整できるので舞台幕の丈の長さに合わせて使えます。

舞台幕は100均などにあるリングとクリップを使って、この梁パイプに通して吊るします。


4. 部品手配と組立準備

設計が終わるとメーカから見積もりを取ります。

アルミパイプやフレームはホームセンターではあまり買えませんが、

メーカに依頼すれば自宅まで無料で発送してもらえます。

例え4mの長いアルミパイプや大量のパイプを購入しても送料無料です。

アルミパイプやアルミフレームの購入方法はこちらで詳しく紹介しています。


(アルミフレームの購入方法)

アルミフレームやパイプの欠点は入手性の悪さです。ホームセンターでは販売されておらずほとんどネット販売のみです。一般的にはミスミやモノタロウなどのweb商社経由で購入しますが、個人では難しいです。しかしメルカリなどでも購入でき、必要部品を一括購入できる方法がここにはありますよ。


Sさんから手配の依頼を受けたのでメーカに発送依頼を行います。

手配からお届けまで2週間程かかり、その間は私の方で組図や組み立て手順書を作成します。

普段見る事がない材料なので、どの部品をどこに使うのかわからない事が多いです。

そこで初めて見る人でも分かりやすくするためにこちらでサポートしています。

「LINK YOUR DESIGNは共同DIYなので完成するまでサポートしています。

Sさんとのやり取りやサポート内容はこちらから見る事ができます。


(Sさんへのサポート詳細)

 アルミパイプを初めて見るSさんは部品が判りません。そこで組図を描いてどの部品をどこに使うという説明をしています。そして私なりに最適な組立て手順を考えて、その方法を伝えることでスムーズに製作できます。


パイプ部品が納品されたら後はSさんが完成までラストスパートです。

アルミパイプの組み立てはとても簡単で使う工具は六角レンチのみです。

基本的な作業はボルトを締めたり、緩めたりするだけで初めて触る人でも直ぐにできます。

この作業性の良さもアルミパイプのメリットです。

アルミパイプやフレームの組立方法はこちらで紹介しています。


(アルミパイプの組立て方法)

 アルミフレームやアルミパイプの組立ては六角ボルトを締めこむだけの簡単作業です。六角レンチ1本あれば全てを組み立てることができます。ウチの小学2年生の子供でもこの通り。誰が作っても同じように組みあがるので技術が要らず、初めての方やDIYしない人も安心して利用できます。


組み立て作業中、Sさんから特に質問等はなく、スムーズに作れたそうです。

当然、途中で分からない事や困った事があればいつでも対応しています。

5.  幼稚園演劇用舞台幕の完成

数日後、Sさんから完成の連絡をいただきました。

いつもそうですが、完成の連絡を聞けるまで落ち着きません。

これで肩の荷が下りた気分になります。

まずは垂れ幕を掛けていない状態がこちらです。

図面通りの舞台幕用の架台が出来上がりました。

この架台に舞台幕を掛けた状態がこちらになります。

正直、私は最初に見た時驚きました。

まさかこのフロア全体を仕切るような舞台幕を作るとは思っていませんでした。

上下の写真を比べてみると全く別のフロアのような変わりぶりです。

開閉できる舞台幕の左右には固定の幕が取り付けられていて、

約8mほど幅のあるフロアが完全に遮断されています。

これで中央に台を置けば立派な演劇ステージになりそうです。

演劇用舞台幕は大きくて重さがありそうですが、

写真を見ると梁パイプはほとんど曲がってなさそうです。

垂れ幕はリングとクリップを使って吊るされているので、取付も簡単そうです。

ここで園児達はどんな演劇をするのでしょうね。

それが見れないのは残念ですが、子供達や関係者の方に喜んでもらえると私も嬉しいですね。


6.  さいごに

幼稚園演劇用舞台幕の共同DIYは如何だったでしょうか?

8mほどの幅があるフロアを仕切って舞台幕を作る」と考えると難しそうなことも

アルミパイプを使えば、簡単に実現することができました。

しかも組立てはほとんど六角レンチだけで出来て、釘を使ったり加工する必要はありません。

簡単に取り付けや取り外しができて、分解すると2mほどの長さに収まるので

収納場所にもそれほど困りません。

パイプなので軽く、持ち運びも楽チンです。

まさにSさんの希望通りのDIYだったのではないでしょうか。

しかしこれを一人で考えて作ろうとすると困難かもしれません。

お互いに持っている知識や情報を出し合うことでより良い物ができていきます。

これが共同DIYの良い点であり普段DIYしない人でも欲しい物を手に入れることができます。

これからも「LINK YOUR DESIGN」を通じて相談のあった共同DIYを紹介していくので

もし興味がありましたら、気軽に声をかけて下さい。

この記事が皆さんの参考になれば幸いです。


アルミフレームやパイプを使ったDIYを一緒にしてみませんか?

 DIYする時間や工具がない

 普段DIYをしないので自信がない

そんな方にも安心で手間がかからず欲しい物が手に入る共同DIYです。

一人で考えるよりも複数人で考えた方がよりいいアイデアも生まれます。

まず設計や構想は御自分で考えて欲しいものをイメージしてください。

もし自分で加工から組み立てまでされる方は必要に応じてアドバイスを致しますし、

手間な部品手配や加工をしたくない方はこちらで実施して組み立てる状態の部品を

お送りすることもできます。

初めて使う材料で不安な方も安心してチャレンジすることができますよ。

気に入った物が見つからない場合は試してみては如何でしょうか?

サポートやアドバイスは無料で実施しているためできる事、できない事があります。

詳しいサポート内容や進め方はこちらで説明しています。

Link Your Design

またこれまでのサポート事例はこちら。

 「サポート事例集





これまでアルミパイプやアルミフレームでDIYした事例です。

気になるDIYがありましたらご覧ください。


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(ロードバイクの保管車庫をDIY)

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